運送業のM&A
運送業界の業界概要、市場動向
- 物流業界(トラック、鉄道、海運、航空、倉庫など)の市場規模は約24兆円で、このうち
トラック運送事業の市場規模は、約14兆円で、物流業界全体の約6割を占めています(2016年度)。
トラック輸送の国内貨物輸送量は、トンベースで約9割となっており、国内貨物輸送において
大きな役割を閉めています。
- トラック運送の分類として、自家の貨物を輸送する自家用トラック(白ナンバー)と、
他者の貨物を輸送する営業用トラック(緑ナンバー)に分かれます。
また、貨物自動車運送事業においては、一般貨物自動車運送事業(不特定多数のの荷主から集荷)
と特定貨物自動車運送事業(品目などに荷主を限定)に大別されます。
- トラック運送事業者は、全体で約62,000社あり、
うち99%以上が中小企業(中小企業法による)となります。
- 1990年に物流二法が施行され、新規参入者の急増、市場競争の激化をもたらしました。
以降、経済的規制の緩和、また公平な競争条件のチェック体制の強化等が順次進められました。
2018年に貨物自動車運送事業法が改正され、トラックドライバーの労働条件改善と、
トラック運送事業者の健全化に資する措置等が図られています。
- トラック運送事業者は、規制緩和後大きく増加し、規制緩和前に比べ1.5倍となりました。
- トラック運送業界は、典型的な労働集約型の事業となっており、人手(トラックドライバー)不足
を背景に、人件費が上昇し、人件費率は約4割程度となっています。
トラック運送業界の課題として、少子高齢化の進展と若年労働力不足、
それに関連する長時間労働問題、また燃料価格の動向(価格高騰の影響)などがあげられます。
出典)全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業現状と課題2020」(2020年3月)
運送業界の業界再編、M&Aの動向
- トラック運送業界の業界構造は、大別しますと、特別積み合わせ関連系列(日本通運、セイノーホールディングス、他)、メーカー関連系列(日立物流、他)、商社関連系列(伊藤忠ロジスティクス、他)、その他独立系列(ハマキョウレックス、SBSホールディングス、他)に分類されます。
- 運送業界は、業界再編が活発で、M&A件数が増加基調にあります。
運送会社のM&Aが増加している背景には、後継者不足の深刻化が挙げられます。
人手(ドライバー)不足や長時間労働問題などを背景に、人員(ドライバー)等確保を
目的の1つとして、同業他社を買収するケースもあります。
- また、運送業は中小企業が多く、効率化やコスト削減などのスケールメリットを目的として、
中小企業同士との合併、物流会社との合併、大手企業への吸収など、
さまざまな形でM&Aが行われています。
M&Aの要点・ポイント
売り手の目的とメリット
- 後継者不在の問題の解決、事業継続(荷主との安定的な取引継続)、雇用維持
- オーナー経営者にとって、株主利益の実現、保証債務の解除
- 大手傘下での事業基盤の強化、設備投資の実施
買い手の目的とメリット
- 事業基盤(ネットワーク)の獲得、エリア・物流拠点の拡大
- 取引先・顧客の獲得
- 車両・人材(ドライバー)、車両の獲得
- 間接コスト、管理コストの共通化、一元化によるコスト削減
M&Aのポイント(例)
- 貨物の内容(消費品目関連、産業資材資材関連等)
- 損益・採算管理の状況等(荷主、車両、エリア、運送効率等)
- リスク要素の検討(コンプライアンス・労務問題等)