建設工事業のM&A
土木工事、建設工事、電気工事、管工事、内装仕上工事、電気通信工事、他
建設工事業の業界概要、市場動向
- 建設投資額(建設業界市場規模)は、ピーク時(H4年度)84兆円以降、一時落ち込み、
その後後回復し、直近では52兆円(ピーク時から約4割減)となります。
建設業者(H27年度末)は約47万者、建設終了者数は約500万人です。
建設投資額のうち公共工事が22兆円(約4割)、民間工事が30兆円(約6割)。
公共工事は土木工事の割合(9割弱)が、民間工事は建築工事の割合(8割強)が太宗です。
- 建設業は、地域の産業、雇用の中核です。
また同時に、地域のインフラ整備の担い手であり、地域社会の安心安全も担う存在と言えます。
- 一方、建設業就業者の高齢化が進行しています。
今後、高齢者の就労者の大量離職の見通しであり、若手入職者の確保育成が喫緊の課題です。
- 建設業者は、大きく「総合建設業」と「職別工事業」に大別されます。
総合建設業とは、建築工事や土木工事などを総合的に担う業者のことであり、
一般に「ゼネコン」と呼ばれています。
職別工事業とは、土木工事や建設工事の一部を担う業者を指し、
内装工事や大工工事などの業者を言います。
- 建設業界において、総合建設業者(ゼネコン)が元請として発注者と契約し、
各工事を下請業者(主に職別工事業者)に依頼し建設工事が進行していきます。
また、さらに下請業者が工事の一部を他の業者(二次下請業者、孫請け業者など)に
請け負わせるケースも多いです。
- 各種建設工事業についてみていきます。建設業界や建設工事業種の定義は様々ありますが、
ここでは建設業法で規定する下記の業種(29業種)を列記します。
なお、下記29業種の建設事業を行う場合、当局(国土交通大臣または都道府県知事)の許可が
必要となります。
- 土木工事業、建築工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、
電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロツク工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、
舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、
内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、
さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業
(出典)国土交通省「建設産業の現状と課題」(2018年度)
建設工事業業界M&Aの動向
- 建設業界のM&A件数は、増加傾向にあります。
従来、建設業界・工事業界において、労働集約的構造から規模の経済が働きにくく、
またM&Aにより複数の企業が統合すると公共工事の入札機会が限定されるなどと言われ、
比較的M&Aがあまり活発に行われてきませんでした。
- しかし近年は、人材不足の解消、事業エリアの拡大、IT・DA化等情報システム化による業務効率化、
管理コスト削減等などを目的に、大手や中堅建設会社によるM&Aが活発に行われています。
- また、経営者の高齢化にともない、
事業承継を目的として売り手から積極的にM&Aを行うケースも増えています。
建設工事業M&Aの要点・ポイント
事業面
- 民間・公共工事の割合、建築・土木工事の割合
- 元請・下請けの割合
- 工事受注実績、工事内容、主要受注先、地域
- 人員、有資格者、技術者、年齢構成
- 外注先の状況
財務面、管理面
- 財務状況、純資産、借入金の状況
- 工事受注管理、原価管理、採算管理、人員管理の状況
- 建設機械、車両等の所有状況
- 許認可(建設業許可)の状況
- 経営事項審査(経審)の状況
業界M&Aの事例(過去の業界再編・M&A事例)
1)高松建設(総合建設)による大昭工業(地方建設)の買収(M&A)
2021年2月、買い手の高松建設は、土地活用を主軸として、賃貸マンションやビル、工場などの企画・開発、施工を手がける総合建設工事会社ですが、大阪府の北摂・高槻地域を中⼼に、工場やマンションなどの幅広い領域で建設事業を手がけている大昭工業を買収(株式取得)しました。
2)ナガワ(ユニットハウス製造)による鳥海建工(建設)の買収(M&A)
2020年10月、買い手のナガワは、ユニットハウスの製造や販売、レンタルを主力事業とする会社ですが、
倉庫や店舗、戸建住宅の工事請負を行っている会社である鳥海建工を買収(株式取得)しました。
3)コニシ(土木工事他)による山昇建設(地方建設)の買収(M&A)
2020年7月、買い手のコニシは、土木建設事業やボンド事業、化成品事業などを多角的な事業を
展開する会社ですが、東海地方を中心に土木工事の設計・施工事業を手がける会社である山昇建設を
買収(株式取得)しました。
4)OCHIホールディングス(建材卸)と長豊建設(地方建設)の買収(M&A)
2020年7月、買い手のOCHIホールディングスは、建材・住宅設備機器の卸売を主力事業とする会社ですが、
長野県を拠点に公共事業の土木工事などを行う会社である長豊建設を買収(株式取得)しました。
5)ヤマダ電機(家電小売)によるレオハウス(住宅建築)の買収(M&A)
2020年5月、買い手のヤマダ電機は、家電の販売店を全国的に展開している会社ですが、
家電小売事業とのシナジー効果を目的に、ナック(レンタル事業)の子会社として
注文住宅の建設請負事業を手がける会社であるレオハウスを買収(株式取得)しました。
6)サーラ住宅(住宅建築)による宮下工務店(住宅建築)の買収(M&A)
2019年6月、買い手のサーラ住宅は、愛知県を中心に静岡県、三重県で、
注文住宅の請負・施工や分譲住宅・土地の販売事業を行う会社ですが、
静岡県浜で注文住宅の建築、販売を行う会社である宮下工務店を買収(株式取得)しました。
7)不二サッシ(建材製造)による日本防水工業(防水工事)の買収(M&A)
2019年5月、買い手の不二サッシは、建築材料の製造・販売・施工事業等を行う会社ですが、
首都圏でビル・マンションの防水工事や塗装工事、設備工事、耐震補強工事などを行う会社である
日本防水工業を買収(株式取得)しました。
8)京成電鉄(電鉄)による式田建設工業(地方建設)の買収(M&A)
2019年4月、買い手の京成電鉄は、首都圏で鉄道事業を中心に、不動産、流通、レジャー業、建設業などを
多角的に展開する会社ですが、千葉県に拠点を置く建設会社であり公共工事に実績ある式田建設工業を
買収(株式取得)しました。
9)戸田建設(総合建設)による佐藤工業(地方建設)の買収(M&A)
2018年12月、買い手の戸田建設は、建築・土木工事を行う準大手ゼネコンですが、
福島県内で豊富な施工実績を有する地元有力の建設会社の佐藤工業を買収(株式取得)しました。
戸田工業は、東北エリアの強固な事業基盤を確立し、
市場シェアを拡大する目的で佐藤工業のM&Aを実施しました。
10)アサノ大成基礎エンジニアリング(総合建設)による三協建設(地方建設)の買収(M&A)
2018年10月、買い手のアサノ大成基礎エンジニアリングは、建築や地盤防災、エネルギーなど
幅広い事業を行う会社ですが、静岡県で土木・建設、上下水道管の工事等を幅広く行う会社である
三協建設を買収(株式取得)しました。
11)オープンハウス(不動産開発)によるホーク・ワン(建設)の買収(M&A)
2018年10月、買い手のオープンハウスは、不動産開発事業(オフィスビル等建築、新築戸建分譲事業、
不動産投資)などを手がける会社ですが、建設工事やリフォーム工事施工、不動産売買・仲介事業を行う
会社であるホーク・ワンを買収(株式交換および株式取得)しました。
12)大盛工業(土木建築業)と井口建設(地方建築)の買収(M&A)
2018年9月、買い手の大盛工業は、下水道を中心に土木建築工事業を運営する会社ですが、
山梨県や上野原市が発注する道路改良や河川、下水道を中心とした公共工事を手がけている会社である
売り手の井口建設を買収(株式取得)しました。
13)安江工務店(地方建設)によるトーヤハウス(地方建設)の買収(M&A)
2018年5月、買い手の安江工務店は、愛知県および兵庫県で住宅リフォーム事業や新築住宅事業、
不動産流通事業を展開している会社ですが、熊本県を中心に住宅・商業店舗などの設計・施工、
リフォームを総合的に手がけている会社であるトーヤハウスを買収(株式取得)しました。
14)サンユー建設(建設)と行方建設(型枠工事)のM&A
2018年4月、買い手のサンユー建設は、建設事業や不動産事業、金属製品事業を主要事業とする会社ですが、
型枠工事を手がける会社である行方建設を買収(株式取得)しました。
15)日本コンクリート工業(建材製造)によるフリー工業(工事業)の買収(M&A)
2018年1月、買い手の日本コンクリート工業は、建築用コンクリート製品を製造・販売する会社ですが、
土木工事と建設資材販売を手がける会社であるフリー工業を買収(株式取得)しました。